ずっと助けを求めてた。か細い声で。
でも、誰も気付いてくれなくてあきらめていた。
そこに、あなたがやってきた。まるで、天使みたいに・・・
「おーはよ」
朝のあいさつも私は家でしか言わない。
普通なら、友達とか、兄弟とか、恋人とか・・・
でも、私は一人だ。
「あっ!来たぞ!」
背後から声がした。すると、頭を思い切り掴まれ、そのまま倒れた。
「沙津季ちゃ~ん。今日も始める??」
そして、4、5人の男女が私の身体を掴む。手、足、腕、太もも、そして、お腹。
「じゃ、一番いきまーす!」
クラスのリーダー、まどかが卵を私にぶつける。
「次、俺~」
「あっ!ずるーい。次は私~」
べちゃ。ぐちゅ。卵って結構痛い。殻が肌に食い込んで。
「ねえ!ノエルにやらせてあげてよ!」
「あっ!ごめーん」
「私たちだけで楽しんで」
「ほら、最後の1個」
ノエル。藤野ノエル。私がまだ、中一の時隣に引っ越してきた現役ハーフモデル。
髪は綺麗な金髪で、小柄で可愛くて、妹みたいなノエル。
口下手で、友達がいなかったノエルはよく私と遊んでいた。
でも・・・
「ほら、早くやりなよ!」
「ねえ。早く」
ノエルの青い瞳には、涙が溜まっていた。ノエル、辛いよね。でも、ノエルは今まで一度も私をいじめなかった。
「ねえ、明日からノエルをいじめる?」
まどかはみんなに提案した。
「いいねぇ~」
「モデルもいいよな~」
「賛成~」
ノエルはカタカタ震えていた。
「ねえ、ノエル。やるの?やらないの?」
まどかは顔をぐっと近づけ、にらみつけながら尋ねた。
「・・・私・・・」
ノエル・・・
「いいよ」
クラスの皆がどよめいた。
「ノエルが助かるなら、それでいい。ぶつけてよ。それ。」
「沙津季ちゃ・・・」
ぽろぽろと涙がこぼれるノエルは崩れるように黙り込んだ。
「あはは!素敵な友情!でもね、そんなのどこにも存在しないの」
「そうだ!さっさと当てろ!」
「でも、ばれたらモデル、やめさせられちゃうね!」
笑い声の中、ノエルはゆっくりと立ち上がった。
「お?やるの?」
ノエルの赤い頬は涙で薄くなっているかのようだった。
「沙津季ちゃん、ごめんね・・・」
ぐっと目をつぶり、覚悟を決める。
ぐちゃ・・・
「え・・・?」
そこには、見しれぬ男の子がいた。
ノエルの手には潰れた卵がある。
「ちょっと、超かっこいー」
「えっ誰誰?転校生??」
一斉に女子が取り囲んだ。
私はそこで体の力が抜け、意識が途絶えた。