「俺が居ないのをいい事に、夜まともに食ってないだろう?朝は菓子パンばっかりおいてあるし」

・・・うぅ、言い返せない。

あたしは、相変わらずキッチンに縁遠い生活をしていた。

それでも、雑貨屋のオーナーに貰ったマグカップを使うべく、毎朝二人分のコーヒーを豆から挽いて作るようになった。

「俺、味噌汁飲みたい・・・」

まるで子供のような口調で口を尖らせている。

「シンが作ればいいじゃん。上手だよ?」

そう、我が家のキッチンはシンに使われていた。

バーで出す料理を手伝ってるうちに覚えたと言ったけど、その味は、どれをとっても絶品だった。

「鍋ないし、炊飯器ないし」

「・・・いる?」

「いる」

「それ、買いに行くの?」

「そ。ミカコ、荷物持ちね」

「えー!ヤダよ!!」

そう膨れっ面を作っていいながらも、シンとの生活の品が増えていく事を嬉しく思っていた。

「じゃぁ、行くね」

「ん、送ってやれなくてゴメン」

いいよいいよ、と手をヒラヒラさせて部屋を後にする。

エントランスの前には、シンのお客だという個人タクシーが止まってる。

事情を話して、いつもこのオジサンが迎えに来てくれるようにしてくれていた。

「おはよーございます」

「おはよー、ミカコちゃん」

「いつもすみません」

「いいよ、こんな親父の目の保養になってるから」

そんな冗談をいいながら、今日も車は病院へと向かって行った。