「それ、洒落になんないから」

突然かけられた声に体をビクンと強張らせ、ゆっくりと後ろを振り返る。

ベランダの大きな窓枠にもたれて腕を組む、シンがそこにいた。

「・・・なんでぇ・・・・・・」

寝てたんじゃないの?

どうして起きてくるの?

「そんなに俺の事が信用できない?俺の力じゃ不足?」

溜め息を付きながら、あたしを見つめる。

「お前がしっかりしないと、俺は仕事にもいけないし、寝る事も出来ない」

「・・・・・・大丈夫・・・だよ」

「お前の大丈夫は当てにならない事、知ってるから」

「・・・・・・どうしたらいいか分かんないよ」

あたしは目を瞑って手すりに顔を埋めた。

怖かった。

サトルの存在も、シンを失う事も。

シンに迷惑をかけたくないと、心が叫んでいた。

「怖いのは分かる。でも、逃げんな」

「そんな事言っても・・・・・・」

ビュッ・・・

突然の強い風で束ねていた髪がほどけて首に張りついた。

「今度変な気おこしたら、監禁するよ?」

少しおどけた口調で言ってあたしの首に手を伸ばす。

張り付いた髪の毛を丁寧にとかして、あたしを包み込むように眼下を覗き込んだ。

「うわ・・・ありえねー。さ、寝るぞ」

シンの大きな手に引かれて、布団に包まる。

温かな布団の中で、シンは離れてしまわないように、あたしの指と自分の指を強く絡ませた。