カシミヤのマフラーをグルグルと首に巻きつけ、急ぐ足取りで外へ出る。

正面玄関の壁に、体を縮めてもたれるシンの姿があった。

「ゴメン、中で待ってれば良かったのに」

こんな風が吹きつける場所で待たなくてもいいじゃん、と慌てて駆け寄った。

「だって、恥ずかしいじゃん」

赤くなった鼻先を人差し指でさすりながら、少し照れた表情を作る。

そんな仕草が可愛らしくて、なんて言ったら怒られるから、こっそり心の中で思って微笑んだ。

「行こっか」

あたしの手を引いて歩き出す。

こうしてる間も、もしかしたらサトルがどこからか見てるかも知れない。

でも、怖くなかった。

言うとおりにならないあたしの事なんて嫌いになってしまえばいい。




ボゥ・・・と正面の屋根に取り付けた赤いライトがあたし達を出迎える。

すっかり暗くなった景色の中で、それは弱々しく光を放っている。

病院の近くに建つ警察署。

入り口で、ゴクリと唾を飲み込んで――

中に足を進めた。