「ただいま帰りました!」

ずぶ濡れになって駆け込んだのは、小さな古書店だった。

ディーはここで、サーバント(従者)のような仕事をしている。
古い本や小物を売るこの店の店主の、身の回りの世話や、雑用を任されているのだ。

「早かったね」
「えぇ、雨が降ってきたので、走って帰ってきたんです」

ディーがばたばたと動き回る音を聞き付けたのか、奥から顔を出した主人に、頼まれていた物を渡す。
隣町の骨董品店で取り置きしてあった、数冊の本だ。
油紙に包んでいた上、ディーが走ったおかげで、濡れずにすんでいた。