「だから、風上君が私に感謝される要素なんて1つもない」
私は、彼を真っ直ぐに見つめる事が出来ず、視線を逸らしながら細々と呟いた。
しかし、彼はその声をしっかりと聞き取り、淡々と返事をする。
「あるよ。俺があの本の作者だってバレずに済んだ」
「え?」
「あれは、俺が"ある人"に想いを伝えるために書いた本だ」
彼は私の目を真っ直ぐ見つめながら言った。
「――…どういう、こと…?」
「俺には好きな奴がいた。だけど俺がソイツに想いを伝えると岡野のグループがそいつをいじめてしまうだろ?」
岡野、とは私をいじめていたグループのリーダーだ。
「うん。岡野さんたちは風上君のこと好きだったから」
私が風上君に話しかけられた日はいじめが特にひどかったし。
その事でよく嫌みも言われた。


