いつも美術部では恵美と麻子と喋っている。


……美術部の活動、してないよね。

でも、この3人で喋ってんのが楽しいんもん。


私はずっとこのままでいいと思ってる。


絵を描くのが好きで入った部活で、凄く仲の良よくなった友達と楽しく話して。


「まーた、ボーっとして。」
恵美が私を呆れ顔で見てくる。

「伊緒ちゃんらしーよ

…あ、一ノ瀬先輩だ」

麻子が窓を見ながら言う。

「あッホントだ!
チョーラッキー!!」

恵美は凄く嬉しそう。


私も窓を見てみる。

窓のむこうには、肩で息をしている男の子が歩いていた。

「…あれ、一ノ瀬先輩って人?」

確か、見た事あるよーな…

「あんた、知らないの!?」

恵美がビックリした顔で見てくる。

「だって、“先輩”なんでしょ?…知らない…」


同級生の名前と顔すら曖昧な私が分かるはずが無い。
ましてや、知らない先輩の名前なんて。


「伊緒ちゃん、やっぱり知らなかったんだね…」


「えっ麻子、知ってんの!?」
「だってあの先輩、有名だよ?」