「・・・匂いねぇ・・・」 学校は死んだお父さんの匂いであふれている。 職員室のコーヒーの匂い。 パソコンの熱がこもった匂い。 教室のチョークの匂い。 それらは、学校は違くても全部お父さんの匂いだった。 「でも、それって俺の匂いでもあるよね」 「は?」 「え、だってそうだよね?俺だって先生だし」 「・・・そうかも」 「だったら、もう俺の匂いにしちゃってよ」 「んぎゃっ」 そう言って、康ちゃんは私をぎゅーっと抱きしめた。