「美愛ちゃん・・・!
どした?食パン持って。」


拓君は驚いたように、美愛のもとへ寄ってきた。


「いや・・・寝坊しちゃってさ。
慌ててパン持ってきたら食欲なくなっちゃって。」


苦笑いしながら話す美愛を見て、拓君は笑った。


「美愛ちゃん、相変わらず面白い。
あ、そうだ!
食欲ないなら、そのパン俺にちょーだい?
俺、今すっごい腹減ってるし。」


と手を差出してきた。


「え・・・でも。」


でもでも・・・食べかけだよ。


「いらなんだろっ♪」

一言言うと、拓君は美愛の持ってるパンを奪って食べ始めた。


「冷めてるけど美味い!」

って。

それは良かった。

『不味い』とか言われたら、それはそれでショックだし、と一人で安心する美愛。


♪キーンコーンカーンコーン♪


拓君と話す暇を少しでも無くそうとしているのは神様なのだろうか?

それとも学校なのだろうか?

校庭中に響きわたるチャイムに誰もが、足を教室のほうへ向け始める。


ヤバイ!教室に行かないと遅刻になっちゃう。

美愛は、また走り出す。


振り返り、

「拓君、またね。」

と手を振った。


猛ダッシュで教室に入ったけど、5秒くらい間に合わず遅刻ー。


なんか、今日ついてないや。


仲の良い佳子(かこ)にも笑われちゃった。