でも・・・淳史君は美愛に何も言ってくれない。


そんなことはお構い無しにというように、亜季は言った。


「亜季姉ちゃん仕事戻るから、拓也、淳史、美愛とここで遊んでて。
了解?」


「うん、わかった。」


拓也君だけが答えて、淳史君は知らん顔。


亜季は、そう言い残してお家を出て行っちゃったの・・・。



「ほらほらー。
3人で何するのかなぁ!?」


おんちゃんが、なかなか話そうとしない美愛たちを覗く。


一番始めに沈黙を破ったのは、拓也君だった。


「美愛ちゃん、淳史、何したい?」


美愛の顔を見て優しく微笑みかけるその笑顔を今でも覚えている。

天使のような笑顔。


「俺、釣り行きたーい!」


美愛が拓也君に見とれてる間に、淳史君が言った。


え!?釣り・・・美愛、海は苦手。

特に夜の海なんて怖いよ。


「・・・み・・・美愛はテレビ見たい!」


思い切って言ってみた。


はじめての人にあまり、懐かない美愛は一言言うのにも時間がかかる。


「俺が先に釣りって言ったもん。」


ひぃぃぃ~・・・

淳史君の視線が怖かった。

これも今でも覚えてるんだ。

そのときは、ただただ嬉しくて。


「あぁも~、淳史は黙ってろよ。
じゃ、美愛ちゃんがテレビ見たいってことでテレビ見よっか。」


拓也君は、また微笑んで美愛に言葉をかけた。


「うんっ♪」


良かった。

海になんか行くと、お化けもクラゲもい~っぱい出ちゃうんだから!


しかし美愛の満面の笑みは、すぐにかき消されてしまった。


「チッ・・・。」

どうしても釣りに行きたかったのか、淳史君が舌打ちをして美愛のほうを睨んでいる。


怖い・・・・。


淳史君を見て呆れたのか、今度は拓也君がきつ~い一言を放った。


「じゃ、お前帰る?」

もちろん、美愛に言った言葉じゃないよ。

淳史君に言ったんだけどー。


淳史君は無言のまま、部屋に着いてきて。

それを見てる美愛はポカーンってしてたっけ?

それとも笑ってたのかな?