「ああ。だが、泣くばかりで。これから見舞いに行こうと思っている。だが、メグの具合が悪いとどうやって知ったんだ?」


えっ……この超現実的な常盤さんに生霊の話をするの?


「常盤さん、いいですか、台詞は『幸せになれ』ですよ」

美月が横から口を挟む。


「さっきから、こればっかりだ。メグに言えってうるさいんだよ。何かあるのか?」

「あー、美月はちょっとばかりロマンチストなの」

わたしがそう言うと、常盤さんは呆れたように頭を振った。

「夢を壊して悪いね、美月ちゃん。メグは元恋人ではないよ」


そうね

お互いに好きだったのに、恋人同士にさえなれなかった。

女性の方が年上すぎるとか、彼の役に立つような後ろ盾がないとか、大人の理由で何も言わずに別れたんだ。

恵さんは身を引いた先で幸せを見つけて

自分だけが幸せになるのが申し訳なくて

今でも常盤さんと一緒にいたくて

でも、一緒にいられなくて

常盤さんが幸せかどうか心配で


――大人の愛って切なくて難しい


常盤さんの後ろ姿を見送りながらそう思った。