「そうかなぁ……」


「僕を信じろ」 

「俺を信じろ」


ん?


悟くんの声に被さるように、別の声が同じ台詞を言った。


声のした方を見ると、書架の間に男の子がいて、どうやら一緒にいるの女の子に向かって言ったようだ。


「俺が好きなのは加奈だけだって」


はぁ、そうですか……

見るからにチャラいあなたに言われても、信憑性に欠けるよね

そう思いながら、加奈ちゃんって子を見ると――げっ! 嘘でしょ!


そこにいたのはうちのクラスの松本軍曹、もとい松本委員長だ。


「あれは一年の長谷川だな」

悟くんが小声で言った。


「一年の長谷川くんって、美月と同じクラスの?」

「うん。学年一の秀才で、学校一のチャラ男さ」

「じゃあ、松本ぐん――さんの彼氏って……わっ!」


わたしは大きな声を出しかけて、慌てて自分で自分の口を塞いだ。

長谷川くんが長身の身を屈めて、松本さんにキスをしたのだ。