ああ、心配


わたしがいない間、圭吾さんはちゃんと眠れるかな?

不機嫌になって誰かとケンカしたりしない?

お仕事でまた怪我をしたらどうしよう


わたしの不安ををよそに、車は走り出した。

圭吾さんは、車が見えなくなるまでずっと見送っていた。


羽竜家に来てから圭吾さんと離れたのは、修学旅行の時だけ。

それだって圭吾さんの従弟の悟くんや、他の親戚の子達と一緒だった。

この町で、わたしはいつだって羽竜の一員だった。

元の家に戻れば、わたしはまた一人ぼっち?


バカね

親父がいるじゃない

幼なじみの、お隣りのなっちゃんも

それに、すぐに圭吾さんのところに戻れるわ


車が竜城(たつき)神社の横にさしかかった。

実家に戻ったまま竜宮には帰らなかった、龍神の花嫁――そんな伝説のある神社だ。

わたしを送り出す事は、龍神様の子孫である圭吾さんにとっては、とても大変な事だったのかもしれない。

わたしが思っているより、ずっと。


「家に帰りたくないか?」

窓の外を見るわたしに親父が言った。