「それは、あなた様がお求めになった場合の事。こちらから差し上げる分には、かまいませぬ。どうか
お受けになって」


わたしは迷いながらも紙の花を受け取った。

小さな赤い花

受け取った途端にわたしの無くした記憶が蘇った。

あら! 本当に神様の花だわ


「それをお隣りの方にお渡しなさい」

巫女さんが言う。


そうね

そのための花なんだ。


「はい。安達くん、これあげる」

わたしは、一緒にいた男の子の名前を思い出して言った。


「いいの? わぁー、すっごく嬉しい」

安達くんはニッコリと笑って紙の花びらを撫でた。

「ずっと、三田さんの事好きだったんだ。話し掛けたくてもなかなかできなくて」


「そうだったの」

「ずっと心に引っかかってた。でも、これでお別れを言えるよ」

「そうね。好きでいてくれてありがとう」

「さようなら。幸せにね」


安達くんは笑顔で手を振って、鳥居の外に出て


消えた