「魅力、って凄ぇよな。そんなアート。」

ほろ酔いのケータは話しが止まらない様子だった。

「知らない人間が、他人同士肩並べてさ、一つのモノに圧倒される。感動するんだ。」

ケータは少し、寂しそうに笑う。

よくこんな表情を見せるケータは、繊細な心の持ち主なんだ。


あたしは複雑な心境で耳を傾けていた。

相槌を軽く打つだけで後は静かにしていた。


『皆様お待たせ致しました!!只今より、第57回志摩川花火大会を開催しまーす!!』

明るく元気な女性のアナウンスが流れると、外は大きな歓声と拍手が沸き起こった。

「始まるね!」

二人で顔を見合わせ空を見つめた。


ヒュー・・・・ドドンッ


夜空に大きな花火が一発打ち上げられた。

花火は輝きを失わぬまま、遠方へ散らばり、消えていく。