「え~どうしよう!!」
ギターを弾いてもらえるなら本当になんでも嬉しかった。

だけどせっかくリクエスト聞いてもらえるなら…

「ジミの『Little wing』聴きたい♪」


ケータは左手で弦を押さえ、右手でピックを動かし、弾き始めた。

綺麗なメロディが店中に響く。
その音の上をケータの歌声が流れる。

ケータは丁寧に弦を押さえる。その指がとても綺麗で、うっとり見惚れた。

視線の先のプレイに、視覚と聴覚を100%働かせていた。


鼓動は、まるで音速と同じだった。


今あたしは、音の波を泳いでいる。そう、泳いでいるんだ。




「はぁ~!緊張した!!!途中間違えたし!」
ケータは弾き終えると、恥ずかしさを誤魔化すかのように早口でしゃべった。

あたしは感動のあまり涙をこぼしてしまった。


「凄いよ、ケータ君…うまいねギター。本当に良かった!!感動したぁ!!!」

涙目で興奮気味に感想を述べるあたしに、ケータは驚いてしまった。

「そんなに感動した!?いや、俺なんてたいした事ないってマジで!!!」

ケータは照れて、慌てて手を大きく横に振った。



「すっごい、居心地の良いギターと歌声…」


あたしは率直な意見を述べた。



そう、本当に居心地がよかったんだ。