「うん…良いよ。ギター弾くよ。エーコちゃんに聴かせてやるかぁ〜!料金たけぇぞ〜!」そう言って両腕を大きく伸ばす。


「マジ!?やったぁぁぁ!!嬉しーッッありがとう!!!生音が聴ける〜最高過ぎる〜!!」

あたしは心の底から叫んだ。本当にギターが好きなあたしは、生音に非常に弱い。


「エーコちゃんって、マジで珍しいよなぁ。希少動物だよ〜。こんなにギターが好きな女の子いないよ。しかも弾いてるわけでも無いのに、詳しく聴いてるし。」

ケータはいつも真っ直ぐ目を見て話す。無邪気な笑顔を見せ、とても人懐っこい。
あの、人見知り時代を越えればこんな姿で話すのだ。


「ギター好き!高校一年生ん時に見たライブのギタリストが凄い格好良いプレイしてね。ギターを弾く姿を見て泣いたのはアレが初めてだね。後で知ったけど、3日前にその人の友達がバイク事故で亡くなったらしいの。」


あたしは懐かしい高校生の頃を思い出しながら話した。



「ちょうど、【生きる】をテーマにした曲が新曲で。ライブでそれを演奏した時に…凄かったよ。魂が込められてた。その人の感情がぶつけられて…指から弦に伝わり、音になり響いた。」


ケータは黙って聞いていた。あたしの懐かしいあの場面を見ているかの様に。


「だから…すごく激しいプレイをしてるのに、悲しみが伝わり…あたしは涙が止まらなかったよ。きっとその人の気持ちが音になってたんだね。」





ケータの顔から笑顔が消え、また目線を落としていた。




「ヤバイなぁ。エーコちゃんにやっぱり聴かせれないよ。俺はそんなギター弾けない。」