冥王星

「大人になってから
こっちで食べるの
はじめてだなあ。」

いつものように
混雑した食堂の片隅で
又三郎と肩を寄せ合って
飯を食う。

よほど腹が減っていたのか、
がつがつと食うが、
その食べ方はきれいだった。

食欲をなくしていた俺も、
つられてがっついた。

「まかないって、
俺たちが食ってるものと
ちがうのか?」

「ちがうよ。
まかないは
見習いの料理人が作るんだ。

残った食材や半端ものを使って。
僕はまだ包丁も握らせて
もらえないけど。」

「うまい?」

「おいしいよ!でもパンは。
パンだけはうちの実家の味が
一番だな。」

「そうか。おまえの実家は
ルテキアのパン工房だったな。」

「ルテキアいちって評判だよ。
僕も、ここに来なければ、
パン職人になってたのにな。」

「パン職人になりたかった?」

「そうだね。
でもここの厨房の料理人なら、
パンだけじゃなくて
いろいろ作れるから、いいかな。」

俺は頬づえをついて、
うれしそうに話す又三郎を
ながめていた。

「作るの好き?」

「好きかな。」

「よかったな。」

「うん。」

又三郎を見ていると
ほっとする。

「僕は休みだけど、
ミゲーレ仕事だもんね。

僕は家でぼーっとしてようかな。
アイリスにカードでも
書こうかな。」

「おまえは子供の頃から
一人でいるのが好きだったのか?
あんな隠れ家を作ったりして。」

「みんなと遊ぶのは好きだったよ。
だけど遊びに熱中してくると、
火が起きたり、風が起きたり、
ほんの小さな現象だったけど。

だからこわくなって、
一人になれる場所が必要だったんだ。」

「そうだったんだな。
じゃあ、俺現場行ってくる。」

「またお昼にね。」