朝、ゲドウに会うのが
気が重い。
それでもいつもどおり
ポーズをとった。
ゲドウはこの朝は、
全く筆を進めず、
パレットを持ち、
筆を持った手を
だらりとしたに下げていた。
「何でおまえなんだよ。」
ゲドウが言った。
何のことかわからず、
黙っていた。
「そう言われたよ。
兄貴に。
俺が、果物かごを抱く青年
という絵を描いたときだ。
その絵はとても評判が良く、
俺の名を世間に知らしめた。
俺は兄貴が俺に殺意を
持っているのを感じて、
ナタを用意して、隠しておいた。
ごく幼少の頃、
兄貴と一緒に蛙の絵を
描いて遊んでいた。
木炭で簡単な落書きを
していた。
おまえも見たことがあるだろう。
蛙の後ろ足は折りたたまれているな。
俺はその様子を正確に描いた。
兄貴はそれがうまくできなかった。
俺たちの落書きを見て
職人の一人が、
俺のほうが絵がうまいって
言った。
兄貴は泣きそうな顔をしていた。
その時俺は得意になった。
兄貴の俺に対する妬みは
その頃から生まれた。」
「15分経ったぜ。」
俺は腕を下げて、
床に腰を下ろした。
ゲドウはパレットの顔料を
混ぜ合わせていた。
ゲドウの目は赤くなっていた。
昨晩は眠っていないようだ。
5分経ち、俺はポーズを始めた。
するとまたゲドウは語りだした。
「母親は俺が仕事をしている時、
脇で父親の愚痴をずっとたれていた。
うるさいから仕事中は
黙っていてくれというと、
今度は俺が飯を食ってる時に
愚痴をたれるようになった。
母親は飯を食わず、
食事している俺の脇に立って、
父親の悪口をずっと
しゃべっていた。
母親の悪意とともに、
食物をただ体に押し込むだけだ。
俺はたえきれず、
向こうへ行ってくれといった。
すると母親は、
あんたは父親とそっくりね。
と言って去った。
そのあと、俺は悲しくなった。
うるさいからと母親を
追い払ったことに罪悪感を
覚えた。
あの時、俺はもう全てが
いやだった。
何もかも燃やし尽くしたかった。
みんな消えてほしかった。」
なんでゲドウは
俺に罪の告白をする?
疑問だったが、
そういうめぐり合わせなのだろう。
この人の時間は16歳の時のまま
とまっている。
その時を、また動き出させるために、
この告白は必要な過程に
ちがいない。
ゲドウはこの日
ちっとも作業を進める気がないらしかった。
俺は15分経つと、
床にあぐらをかいた。
そしてゲドウの足元と、
体の脇に下がったままの、
絵筆を見ていた。
気が重い。
それでもいつもどおり
ポーズをとった。
ゲドウはこの朝は、
全く筆を進めず、
パレットを持ち、
筆を持った手を
だらりとしたに下げていた。
「何でおまえなんだよ。」
ゲドウが言った。
何のことかわからず、
黙っていた。
「そう言われたよ。
兄貴に。
俺が、果物かごを抱く青年
という絵を描いたときだ。
その絵はとても評判が良く、
俺の名を世間に知らしめた。
俺は兄貴が俺に殺意を
持っているのを感じて、
ナタを用意して、隠しておいた。
ごく幼少の頃、
兄貴と一緒に蛙の絵を
描いて遊んでいた。
木炭で簡単な落書きを
していた。
おまえも見たことがあるだろう。
蛙の後ろ足は折りたたまれているな。
俺はその様子を正確に描いた。
兄貴はそれがうまくできなかった。
俺たちの落書きを見て
職人の一人が、
俺のほうが絵がうまいって
言った。
兄貴は泣きそうな顔をしていた。
その時俺は得意になった。
兄貴の俺に対する妬みは
その頃から生まれた。」
「15分経ったぜ。」
俺は腕を下げて、
床に腰を下ろした。
ゲドウはパレットの顔料を
混ぜ合わせていた。
ゲドウの目は赤くなっていた。
昨晩は眠っていないようだ。
5分経ち、俺はポーズを始めた。
するとまたゲドウは語りだした。
「母親は俺が仕事をしている時、
脇で父親の愚痴をずっとたれていた。
うるさいから仕事中は
黙っていてくれというと、
今度は俺が飯を食ってる時に
愚痴をたれるようになった。
母親は飯を食わず、
食事している俺の脇に立って、
父親の悪口をずっと
しゃべっていた。
母親の悪意とともに、
食物をただ体に押し込むだけだ。
俺はたえきれず、
向こうへ行ってくれといった。
すると母親は、
あんたは父親とそっくりね。
と言って去った。
そのあと、俺は悲しくなった。
うるさいからと母親を
追い払ったことに罪悪感を
覚えた。
あの時、俺はもう全てが
いやだった。
何もかも燃やし尽くしたかった。
みんな消えてほしかった。」
なんでゲドウは
俺に罪の告白をする?
疑問だったが、
そういうめぐり合わせなのだろう。
この人の時間は16歳の時のまま
とまっている。
その時を、また動き出させるために、
この告白は必要な過程に
ちがいない。
ゲドウはこの日
ちっとも作業を進める気がないらしかった。
俺は15分経つと、
床にあぐらをかいた。
そしてゲドウの足元と、
体の脇に下がったままの、
絵筆を見ていた。

