「朝食だよ!」
快活な声と共に
又三郎がゲドウの工房に
食事を持ってきた。
又三郎は俺を見て
うれしそうにほほえんだ。
俺も又三郎を見た。
「目線!!」
すぐさまゲドウの声が
飛んでくる。
又三郎はもういなくなっていた。
俺は仕事をしている又三郎の
姿が好きだった。
今日は安息日だった。
又三郎の家で激しく交接した。
二人とも何度も低い天井に
頭をぶつけた。
「又三郎は若いな。」
俺はそう言って、
仰向けになっている又三郎の
体の上にぴったりと体をつけた。
足が、戸板にぶつかるので、
折り曲げていなければならなかった。
「俺、ずっとここにいようかな。」
俺は又三郎の胸に頬をくっつけて
つぶやいた。
「え?」
「ずっとここにいて、おまえと一緒に。
おまえと一緒に歳をとって、
おまえに看取られて。」
「僕はずっとここにいるつもりだけど
ミゲーレはちがうの?」
又三郎は俺の背中を
優しく抱いた。
「俺はここに来た時、
ここは通過点のつもりだった。
オーベール師もそういうつもり
らしかった。」
「ずっと、ここにいなよ。」
又三郎はそっと
俺の髪の毛をつかんだ。
「そうしようかな。」
「それがいい。」
しばらくお互いの体温を
感じあっていた。
「最近、不思議な力は
起こらない?」
俺はたずねた。
「このごろは何も起こらないよ。」
「魔法は習ったのか?」
「いいや。あいかわらず。
でも、オギ副院長様は、
僕の魔力の発現と、
ミゲーレとの出会いが、
何か関連があるんじゃないかって。」
「おまえも、そう思う?」
「たしかに、
ミゲーレと初めて話した頃から
不思議なことが起こりだしたね。」
現在は、何も起こっていない。
まるで嵐の前の静けさのように。
「僕、行かなきゃ。」
「厨房か?」
又三郎は服を着ている。
「そうだよ。
安息日は交代で休むけど、
僕は入ったばかりだから
休みなしさ。」
そう言いながらも
どこか楽しそうだった。
次の朝も、またいつものように
又三郎が工房にやってきた。
「朝食だよ!」
そして俺を見て
にっこりと笑う。
「又三郎!」
ゲドウが言った。
「どうしてミゲーレにだけ
笑いかけるんだよ。」
突拍子もないことを言う。
「だって、僕はいつも
声をかけてるけど、ゲドウは
寝てるか、絵を描いてるかで、
ちっとも僕のほうなんか
見ないじゃないか。」
「ゲドウも笑いかけて
ほしいのか?」
俺が言った。
ゲドウは絵筆で顔料を
塗りたくっている。
「僕、ゲドウに笑いかけるよ。
君が見ていようがいまいが。」
又三郎は言って去っていった。
ゲドウの手は止まっていた。
快活な声と共に
又三郎がゲドウの工房に
食事を持ってきた。
又三郎は俺を見て
うれしそうにほほえんだ。
俺も又三郎を見た。
「目線!!」
すぐさまゲドウの声が
飛んでくる。
又三郎はもういなくなっていた。
俺は仕事をしている又三郎の
姿が好きだった。
今日は安息日だった。
又三郎の家で激しく交接した。
二人とも何度も低い天井に
頭をぶつけた。
「又三郎は若いな。」
俺はそう言って、
仰向けになっている又三郎の
体の上にぴったりと体をつけた。
足が、戸板にぶつかるので、
折り曲げていなければならなかった。
「俺、ずっとここにいようかな。」
俺は又三郎の胸に頬をくっつけて
つぶやいた。
「え?」
「ずっとここにいて、おまえと一緒に。
おまえと一緒に歳をとって、
おまえに看取られて。」
「僕はずっとここにいるつもりだけど
ミゲーレはちがうの?」
又三郎は俺の背中を
優しく抱いた。
「俺はここに来た時、
ここは通過点のつもりだった。
オーベール師もそういうつもり
らしかった。」
「ずっと、ここにいなよ。」
又三郎はそっと
俺の髪の毛をつかんだ。
「そうしようかな。」
「それがいい。」
しばらくお互いの体温を
感じあっていた。
「最近、不思議な力は
起こらない?」
俺はたずねた。
「このごろは何も起こらないよ。」
「魔法は習ったのか?」
「いいや。あいかわらず。
でも、オギ副院長様は、
僕の魔力の発現と、
ミゲーレとの出会いが、
何か関連があるんじゃないかって。」
「おまえも、そう思う?」
「たしかに、
ミゲーレと初めて話した頃から
不思議なことが起こりだしたね。」
現在は、何も起こっていない。
まるで嵐の前の静けさのように。
「僕、行かなきゃ。」
「厨房か?」
又三郎は服を着ている。
「そうだよ。
安息日は交代で休むけど、
僕は入ったばかりだから
休みなしさ。」
そう言いながらも
どこか楽しそうだった。
次の朝も、またいつものように
又三郎が工房にやってきた。
「朝食だよ!」
そして俺を見て
にっこりと笑う。
「又三郎!」
ゲドウが言った。
「どうしてミゲーレにだけ
笑いかけるんだよ。」
突拍子もないことを言う。
「だって、僕はいつも
声をかけてるけど、ゲドウは
寝てるか、絵を描いてるかで、
ちっとも僕のほうなんか
見ないじゃないか。」
「ゲドウも笑いかけて
ほしいのか?」
俺が言った。
ゲドウは絵筆で顔料を
塗りたくっている。
「僕、ゲドウに笑いかけるよ。
君が見ていようがいまいが。」
又三郎は言って去っていった。
ゲドウの手は止まっていた。

