一晩中馬上だったので俺は疲れた。
剛力は全く疲れもみせずひらりと馬から降りた。

俺は寝不足と酔いで具合が悪かった。
ずり落ちるようにやっと馬から降りた。

「大丈夫か?具合悪そうだね。
とりあえず休んだほうがよさそうだ。」

とにかく見張り小屋のベッドにて少し眠らせてもらった。



それからしばらくして、命名式と洗礼式が行われた。

テラスいっぱいにタペストリーが敷き詰められた。
それには一つ一つに聖人の姿が描かれていた。

テラスを望むバルコニーで、オーベール師と再会した。

「本当に、よく来てくださった。よかった。」

握手を交わした。

「まず、これを。」

黒いローブを渡された。
ここの修道士たちがみな身に着けているものだ。
さっそく着込んだ。

「これから、あなたに霊名が授けられる。
その名前は神がお決めになる。」

「はい。」

師はゆりの花の頭の部分を弟子から受け取った。
ゆりに向かい、十字をきり、

「主の祝福を。」

と言った。

「今から、あなたはテラスに向かって後ろ向きに立ち、
この祝福されたゆりの花を、放り投げるのです。
花が落ちたところのタペストリーに描かれている聖人が
あなたの守護聖人になります。
そしてその名をいただくことになります。」

「わかりました。」

俺は花を持ってバルコニーに立った。
敷き詰められたタペストリーの周囲にはぐるりと修道士たちが囲んでいた。

こういう時、どういう作法をとったらいいのかなんの説明もなかった。
俺は自然と自分に身についている行動をとった。

ゆりの花を両手に掲げ、ゆっくりと頭を下げた。
そしてテラスに背を向け、花を上空に放り投げた。