最近、qの声がきこえてこない。
俺の人格に完全に取り込まれてしまったのか。

寝室にトラビスが来たことも大きい。
休む前に、よくトラビスと話す。
神経質男がうるさいのでごく短い会話だが。

さっき服を脱がされたせいなのか、
やけに冷える。

「寒い」

この部屋にもステンドグラスの窓があった。
この建物の窓という窓はすべてステンドグラスだ。

俺は暖炉の上によじ登って窓から外を見た。
するとなんと雪が降っている。

この部屋はミカエル山の中腹に
位置しているようだった。
ふだん見ている景色よりもだいぶ
海が近い。

その海が、わずかに凍っている。
まだ、10月だというのに。

そのとき鍵ががちゃがちゃと音を立てて
扉が開いた。
ゲドウが入ってきた。

「ばかに冷えるな。」

手に薪を持っている。

「今、火種を持ってきてやるよ。」

俺は暖炉に薪を積んでいった。
まもなく鉄箸に火種をつかんだゲドウが
やってきて、暖炉に火を入れた。

「ここではいつもこうなのか?
もう、海が凍っている。」

俺はたずねた。

「いや。この海が凍ることはないよ。
最近の天気はおかしい。
この前は真上で雷が鳴ってたって言うのに。」

はっとした。
もしや、又三郎の魔力?

ゲドウがさらに毛布を持ってきた。

「急に冷えてきたからな。」

それっきり、またガチャガチャと
鍵をかけて行ってしまった。

火を入れてもらって助かった。