事務員のねずみが俺を
省みの部屋へいざなう。

ねずみはいつも
あちこちの部屋やら穴倉やらを
忙しく行ったり来たりしている
小柄な男だ。

螺旋階段を降る。
これでもか、というくらいに降りる。

そしてさらにまたいくつかの
階段を降り、このミカエル山の
もっとも深い深層にたどり着いた。

そこには痩身の男がいた。
俺よりも少し年かさだろうか。

ここへ来てからこんな奴は
見たことがない。

どうも、他の修道士と
雰囲気が違っていた。

修道士は身だしなみも
整えることが義務付けられていたので
みなそれなりにこぎれいにしていたが、
この男ときたら、
髪は伸ばし放題、無精ひげも生えている。
全体にしおれていた。
そのなかで、両の目だけが
やけにぎらついていた。

「ミゲーレ、こいつはこの省みの部屋の
番人、ゲドウだよ。
こいつはめったに上に上がってこないから、
あんたは知らないだろう。」

ねずみが紹介してくれた。
そして書類をゲドウに渡し去っていった。

ゲドウは無言で鉄の扉の鍵を開けた。
そこにはいくつかの部屋が並んでいた。

ゲドウは手前の部屋の扉を開け、
俺に入るように促した。

省みの部屋とは、なんのことはない。
独房だ。

小さな部屋にベッドと、便器と、洗面台と、
暖炉まである。

そして壁に十字架が掲げられ、
ひざまずくための台まで置いてある。

「そこで一日中祈ってるんだよ。」

ゲドウの声をはじめて聴いた。

独房の中で突っ立っている俺を、
ゲドウが真剣なまなざしでながめている。

俺の頭のてっぺんから
足の先まで眺め回す。

それは俺を見ているというより、
俺という物体を見ているといったほうが
的確だ。

「おまえ、ちょっと服を脱いでみろ。」

ゲドウが言った。

「は?」

「服を脱げって言ってるんだ。」

ゲドウはそう言うなり、
俺のローブのすそをまくり上げた。
わけのわからぬまま、裸にされた。

そしてまた、ゲドウは俺の体をながめている。
皆目わけがわからない。

「おまえ、なかなかいい体をしているじゃないか。」

何だ、こいつ、衆道か?

「7日間の省みがあけたら、
ちょっとした小遣い稼ぎをさせてやろうじゃないか。」

俺はさっさとローブを身に着けた。

「一体なんのことだ?」

ゲドウは俺の問いには応えず、
扉を閉め鍵をかけた。

ほんとにここにはおかしな奴が多い。

西洋の鍵というのはやたらに
何度も掛け金がかかる。

俺は鍵がかかるなり、
ベッドにごろんと横になった。

ふうと長いため息をついた。

一人になって、
精神がゆったりと開放されていく。