その夜、団長の家にいた俺を迎えに来たものがあった。
それは馬に乗った騎士だった。

「私はミカエル山から来た剛力と申します。」

修道士だろうか?
甲冑をつけた山のような大男。
どこから見ても戦士にしか見えない。

「さっき、あなたの幻灯を拝見していたんですよ。
本当にすごかった。とくに最後の光の連続が。」

「そうだったんですか。ありがとう。
ところであなたはミカエル山の護衛の方ですか?」

「たしかに護衛ともいえますが、私も修道士です。
ミカエル山はよく隣国から攻撃されるので、
武力もそなえているんですよ」

そうか。
あの位置、微妙なところだものな。
俺が少し不安げな顔でもしたのだろうか、騎士は言った。

「でも大丈夫。大天使ミカエル様のご加護がありますから。
海に囲まれているし、風はつよいし、
一度も敵の上陸を許したことはない。

さあ、行きましょう。干潮に間に合わなくなる」

団長への挨拶もそこそこに、一緒に馬に乗せてもらう。
馬に乗るのは初めてだった。

剛力は馬に鞭を入れて馳せ急ぐ。
馬の躍動と、速さ、そして掛け声に
俺の胸は躍った。
腹の底から声があふれ出た。
気づくと叫んでいた。


過去が風と共に後ろに過ぎ去っていく。