冥王星

医務室では寝台の上のトラビスを前に、
ドクターサリエリが腕組みをして座っていた。

「今、気分は?」

「大丈夫です。」

サリエリは自分の頬をさすりながらうなった。

「失礼します」

俺は声をかけて医務室に入った。

「ミゲーレ君、トラビス君は意識を失って倒れていたのかね?
今ひととおり診察してみたが、とくにどこにも異常がみあたらないんだよ。
若干、不整脈があったが、この年齢だ。一時的なものだろう。」

俺はポケットからキャラメルを一つ出し、診察机の上にころがした。

サリエリもトラビスもあっけにとられた。

「なんだね?これは。」

「キャラメルです。先生の大好物だとおききしまして。」

サリエリはなにがしか感じ取った目で俺を見た。

俺はさらに、二、三個のキャラメルを出してみせた。

「先生、お願いです。何も聞かずに、
司祭にはトラビス助祭が気を失っていたと話していただけませんか?」

「ふむー。」

サリエリがキャラメルの一つをつまんで眺めている。
そして俺を見た。
俺はポケットから一掴みのキャラメルを出して机にばらまいた。

「おっ!」

これには少しサリエリも驚いたようだ。

「先生に、とくにご迷惑になるようなことではないと思いますが。」

「まあ、そうだねえ。」

俺は駄目押しで、もう一掴みのキャラメルを積んだ。

「はは。どうしたんだいミゲーレ君、こんなにたくさんのキャラメル。
わかったよ。トラビス君のことはうまく言っておいてやるよ。」

俺は息をついた。

「ありがとうございます。」

するとサリエリはトラビスのことも俺のことも、もうなんの関心もなくなったようで、
上機嫌でキャラメルの山を、上等の漆塗りの箱に大事そうにしまっていた。
そして奥の自室に入っていった。

サリエリが甘党で本当に助かった。