冥王星

「なんて?」

「あなたは今、自分が道を外れていると思っているかもしれないが、
それも旅の途上なんだって。

たしかに、ずっと高野山にいたら霊力を失うようなことも、
自堕落な生活を送るようなこともなかっただろうけど、

そのかわり、山にいたら出会えないような奴にも出会えたし、
何より、この世界を知った。
高野山も、ここも、あまりに狭い世界だ。
そして自分がごくあたりまえだと思っていた場所が、
実は特殊な場所で、しかもものすごく恵まれたところだったということがわかった。

俺は堕落したが、それも必要なことだったんだ。
今はすごくそう思ってる。」

「堕落したことが、必要なことだったんだ。」

「うん。」

「だけれど、罪と知っていて罪を犯すのは、悪だ。」

「だってさ、いつもいってるじゃん、神はどんな罪人でも許すって。
だから許してもらえるよ」

「許してもらえるから、罪を犯すなんて、それはちがう。」

「あんたとは話が合わないな。それより差し迫った問題がある。」

「今日のミサのこと、司祭に詫びなければ。」

「何て言うつもりだ?」

トラビスは悩みこんだ。

「仮病を使え。」

トラビスが俺を見た。また罪を?そういわんばかりだった。

「いいか、あんたは、ここで倒れていた。それを俺が見つけた。
そういうことにしよう。」

「それぐらいしか、方法がない、か。」

「あながちうそでもないよ。あんたは恋わずらいだ。」

トラビスは悲しそうに笑った。