冥王星

ミサのあと、修道士たちでトラビスを探し回った。
なんだかやな予感がしていた。

(大丈夫だよな。)

(きっとみつかる。聖書に汝殺すなかれってかいてあるじゃないか。)

(殺すなかれの、殺すは、他殺も自殺も含まれるって、トラビス言ってたよな。)

俺は暇があれば、この修道院の建物をくまなく探検していたので、
今では使われていない物置とか、謎の扉とか、よく知っていた。
山肌に立てられた建物の構造上、小さな隙間や空間があちこちにあった。

西側の、今では誰も通ることのない渡り廊下の扉をのぞいてみた。

いた。

格子の隙間から西日がさしていた。
廊下の突き当たりで、トラビスがうずくまっていた。

俺はそっと扉を開け廊下に入り、また扉を閉めた。
顔を上げたトラビスを見て、息をのんだ。

別人だ。
あの美しい深い緑色の瞳はどこへ行った?
疲れ果て、よどんだ目をしていた。

「トラビス、どうしたんだよ?」

すぐさま傍らに寄り顔をのぞいた。

「ミゲーレか。」

「あんたが、ミサをすっぽかすなんて。」

「こわかったんだ。」

「何が?」

トラビスは黙ってしまった。
俺は待った。
締め上げられているような声でトラビスが言った。

「僕はマリアを愛している」

「知ってる。」

トラビスが驚愕した。

「そ、それは、君だけか?」

「多分そうだと思う。あと、ヴェロニカは気づいてると思う。」

トラビスは額に手を当ててうなだれた。

「あの子のことしか考えられない。
そして・・・あの子にふれたいという衝動をおさえられない。」

「うん。」

「そしてあの子の受難。」

トラビスは口を覆った。
おそらく、ツチノコの買春のことをさしているのだろう。

「どんなことをされているのかと思うと、もう。」

震えている。

「だけど、僕の欲望も、同じだ。

お願いだミゲーレ、僕を縛り付けてくれ。
でないと、あの子のもとへ走り出してしまう。
そして罪を犯してしまう。」

トラビスが俺に取りすがってきた。
俺はトラビスの頬を打った。

「しっかりしろ。」

トラビスは打たれた頬を押さえてうつむいた。

「あんたの背負ってる十字架は、ちょっと重すぎるんじゃないか?
神様に頼んで、少し軽くしてもらえよ。」

「そんなことが、できるか。」

トラビスは十字架に押し潰されそうになっていた。

俺はトラビスの肩を抱いた。
その背中は緊張で非常に硬くなっていた。

ゆっくりと背を撫でた。
少しずつ、緊張がほぐれていく。