日曜、博士が俺に声をかけてきた。

「ミゲーレ!歌の練習しようぜ。」

「ごめん。今日はトラビス助祭にたのまれて、日曜学校の手伝いがあるんだ。
チカラ先生のところへは、一人で行ってくれよな。」

「ええ、僕一人で?」

「じゃあ、他のソプラノの奴らと一緒に行けよ。」

博士はぶつくさ言いながら行ってしまった。




巡礼者のためのミサは毎日午前と午後に行われていた。
日曜は午後だけ行われていた。
日曜のミサには宿場町で働く人々も多くが参加した。

助祭はミサのとき司祭の補佐を行う。

ホスチアという真円の白い煎餅のような食べ物に、
司祭が祝福をさずけると、それは聖体になる。

日曜のミサの参加者は多い。
聖体拝領には多くの人が並ぶ。
ホスチアを人々に授けるのが助祭の仕事だった。

俺は人の並び具合を見てホスチアの補充をするようにたのまれていた。

助祭は大人には両の手のひらの上にホスチアをのせ、
子供には直接口に放り込んだ。



聖体拝領の列の中に、ロマ人の母娘がいた。
少女はまだ十歳か十一歳くらいに見えたが、
二人とも娼婦だと一目でわかった。

質素な服を着ていたが、隠している肌から女の香がにじんでいた。
少女はとてもかわいらしい顔をしていた。

ミサに参列しているせむしが、鼻息も荒く少女を見つめ、
ふがふが笑っている。
せむしの横に座っている婦人が、奇怪なものでも見るように、
体を少しせむしから遠ざけた。

そういえば、せむしは女から理由もなくきらわれると嘆いていたが、
理由はこんなところにあったか。