冥王星

週に一度安息日があった。
この日は労働は休み。

事前に許可を得た上で外に出かけていくものもあったし、
みな思い思いにすごしていた。

俺は不可思議な、このミカエル山の建物を探検していた。
テラスで少年修道士たちが遊んでいた。

俺は自分の子供の頃を思い出していた。

糞餓鬼博士が、一人で本を読んでいた。
本を読むのならテラスでなくても読書室で読んでもよさそうなのに、
ここで読んでいた。

「博士!久しぶりだな。」

博士は顔を上げて俺を見たが、すぐにまた本に目を落とした。

「今日は安息日だってのに、ヘブライ語の研究かよ?」

「これが僕の安息なんだ。」

俺は博士の横にどっかと腰を下ろした。

「ここにも小坊主がたくさんいるんだな。
あんたはみんなと遊ばないのか?」

「話の合う奴がいなくてね。」

「そうだろうな。」

博士は無表情のまま本に目を落としている。

「友達なんか、いらないよな。」

俺がそういうと、博士は俺を見た。

「ああ、そうだな。こうやって本読んでれば、淋しくない」

「俺は心の中に、最高の相棒がいるから、淋しくないんだ。」

博士は真顔になった。

「あんた、頭大丈夫?」

俺は笑ってやった。

「博士には、ちょっと難しいお話だったかなあ?」

博士はむきになって言った。

「あんたの言ってることは、荒唐無稽だ!」

「そんなことないぜ。」

「最高の相棒ってなんだよ?」

「前に俺がロマリアで道化師やってたことは知ってるよな?」

「ここで幻灯会をやってたな。」

「その少し前に、一緒に住んでた弟みたいな奴がいてな、
そいつは病気になって死んじゃったんだ。」

博士はだまって耳を傾けている。

「そいつの骸は、小船に乗せて、河に流してやったよ。
でもそいつの存在は、俺の人格の一部になって、今も生きてるんだ。」

博士の瞳には深い集中力が宿った。

「死んじゃったのに、生きている?」