冥王星

ベッドに横になった。

(俺、朝博士とけんかしちゃったからな。)

(それと、合唱のことと、関係あるのかな?)

(わからないけど、博士って友達いなさそうだよな。)

(そりゃあ、あの高飛車じゃあね。)

(唯一の特技のヘブライ語を俺に教えて、
すげえって言われたかったんだろうか?)

(それなのに、ミゲーレにヘブライ語はいらないって言われちゃって。)

(落ち込んでたのかもな。)

(かわいそう。)

(ちょっと、かわいそうなこと、しちゃったかな?)

(それにしても、ニコルの歌、すごいよかったー。)

(そうだな。)

(あんなにきれいな声の持ち主が悪い奴なはずないよ。)

(そうなんだけどな。なんか、気に食わないんだよな。)

(お互い、近親憎悪ってやつじゃないの?郷が近いから。)

(そうかもしれないけど、攻撃魔法に回復魔法、剣術に歌、全部完璧なんてよ。
なんか一個でもいいから、奴に勝てるものないかな。)

(回復魔法なら、ミゲーレ使えるじゃないか。)

(使えないよ。昔はできたけど。)

(俺が病気のとき、治してくれただろ。)

(あれは魔法じゃない。きっと精神的に苦しさがやわらいだだけなんだ。)

(ううん。ちゃんと効いてたんだよ。)

(そうなのかな?)

(そうだよ。だからきっと、また少し勉強したらすぐに使えるようになるんじゃない?)

(そうか、昔やったことなら、またできるようになるかもな。
まずはそこからとっかかってみるか。)

そのとき、天井から水が降ってきた。
雨漏り?

目をひらくと、神経質男の顔があった。

「うわ。」

「悪霊退散。悪霊退散。」

神経質男は俺に聖水を振りかけている。

「あの、やめてくれませんか。」

「今、おまえは悪霊と話しをしていただろう。」

「あ、きこえてました?」

「天にましますわれらの父よ、願わくば御名の尊ばれんことを、
御国の来たらんことを」

神経質男はロザリオをかざしながら祈りの言葉を唱えている。
俺は爪をむきだす格好をして、威嚇する猫のような声を発した。

「とり殺すぞ!!」

「ひあああ!!」

神経質男ははしごから転げ落ち、慌てて自分のベッドに駆け上った。
布団をかぶってガタガタ震えている。

俺はそのまま眠ってしまった。