そこはとても不思議な場所だった。

海の中に魔城が浮かび上がっている。
小さな山にへばりつくように家々が並び、頂には豪奢な尖塔が並んでいる。
時間によっては、海の干満で、歩いて島に渡れるらしかったが、
その時間は短く、下手をすると波にさらわれてしまうというので、船で渡った。


いつもどおり興行を終えた。
ふだん娯楽の無い修道士たちはたいそう楽しんだようだ。


道化の化粧を落としているとき、老師が話しかけてきた。
それはこの地に聖堂をはじめて作った大僧正様だった。

「幻灯師どの。あなたの幻灯は、とても不思議でしたな。」

「ありがとうございます。」
俺は立ち上がって礼を言った。

「あなたの術は、並みの見世物ではない。
あなたの幻灯はわれわれの五感に直接働きかけてくる。
あなたはただの道化師ではありませんな。」

「そんなことありません。俺はただの道化師。
サーカスに雇われてるだけですよ。」

「あなたは、どこかで本格的な修行をされていたことがあるのではなかろうか?」