次の日から、俺は現場に出た。

まだまともに動けるほど
回復していないが、
なんとか動いているうちに、
また元に戻るだろう。

「ミゲーレ、大丈夫なのか?」

ニコルが駆け寄ってきた。

「まあ、なんとか。」

ニコルが乱暴に
俺の両手を取った。

「この手・・・」

「まだちょっと動かしにくいけど、
どうにかなるさ。」

ニコルは俺の
こわばった両手を包み込んで、
ぐっと力を込めた。

「出てきたからには、
今までどおりの働きを
してもらうからな。」

俺の胸に、
なにかうれしさが宿った。
ニコルはやっぱり、
こういう奴で
あってほしいのだ。

ニコルはさっさと
作業場に戻っていった。



資材を運んでいたニカイアが
俺を見つけると、
仕事を投げ出して、
俺のところに来た。

ニカイアの頭は
丸坊主になっていた。

そして、唐突に言った。

「ミゲーレ、俺、修道士、
やめる。」

「えっ、やめてどうするんだ?」

「俺、戦士になる。

騎士じゃなくても、
歩兵でも、雑兵でもいいから、
戦士になりたい。

そして戦って、死にたい。」

その声は
もはや子供の声ではなく、
男の声だった。


「オーベール師には
もう話したのか?」

「まだ。

一番最初に、
ミゲーレに言いたくて。

あんたが戻ってくるの、
待ってた。

今から、行って話してくる。」

そう言うと、さっそく
オーベール師の執務室へ
向かって走っていった。


戦って、死にたい。


ニカイアの死への欲動が、
消えたわけではないんだ。