俺は
見慣れない部屋で寝ていた。

又三郎は涙を流していた。
そして俺の髪をそっと撫でた。

「ミゲーレ、わかる?」

「又三郎じゃないか。」

そう言って、
手を伸ばそうとした時、
手が動かなかった。

「先生、ミゲーレが、
戻りました。」

又三郎が隣の部屋に
向かって呼ぶと、
ドクターサリエリが来た。

「ミゲーレ君、わかるかね?
君は三日間も
眠ってたんだよ。」

「おしっこがしたいです。」

サリエリが尿瓶を
持ってきて又三郎に渡した。

「え?」

俺は尿瓶を
使わなければならないのか?

「君はひどい火傷を負ったんだ。
オギ副院長が回復魔法を
かけたけれど、
少し時間が経って
しまっていたのと、
程度がひどかったため、
完全には治らなかった。」

ドクターサリエリが
話している間に
大量の尿が出た。

「あふれちゃうかと思った。」

又三郎が言った。

「又三郎、
みんなはどうなったんだ?
ニカイアは?ニコルは?
トラビスは?」

俺は訊いた。

「みんな、大丈夫だよ。
もう働いてるよ。」

「そうか。」

「どれ、君の具合を
診せてもらおうか。」

ドクターサリエリは
俺の両手の包帯をはずした。

「一番、両手がひどくてね。」

手の皮膚は突っ張って、
うまく手が動かせない。

それからドクターは
俺の首から顔面に
貼り付けてある
ガーゼをはずした。

「うん。やっぱり、
痕が残ってしまったね。
でも治ってるよ。」

「顔に痕が残ったんですか。」

「見てみるかい?」

ドクターは鏡を持ってきて、
又三郎に渡した。

又三郎は
寝ている俺に見えるように
鏡をかざした。

たしかに、
首から左の頬にかけて
ケロイド状になっていた。

又三郎は泣いてしまった。

そしてそうっと、
俺の火傷の痕に
指の甲を触れた。

「おまえ、何?
俺が男前じゃなくなったら、
俺のこときらいになるの?」

又三郎は涙を
流しながら笑って言った。

「ミゲーレは、
前よりずっと男前だよ。」

そう言って
俺の火傷の痕に
そっと頬を寄せた。

それよりも問題は手だ。

「先生、この手は、
もう動かないんですか?」

ドクターは俺の手を取り、
よく観察した。

「大丈夫だろう。
はじめ動かしにくいだろうが、
だんだん動くように
なってくるだろう。
積極的に動かしてみるんだ。」

「よかった。」

又三郎が俺を抱いた。