冥王星

朝の祈りの時間が終わり、
食堂へ行った。

すると礼拝堂には
姿をみせなかった
ニカイアがいた。

ニカイアと又三郎が
話していた。

「俺、今日からここで食う。
だからサンドイッチは
いらない。」

ニカイアが
カウンター越しに言った。

「本当?
それなら一番いいんだ。
スープもよそっていけよ。」

又三郎は驚いていた。

本当に驚きだ。
ニカイアのこの変化は
一体なんだろう。


俺は食事を始めている
ニカイアの正面に座った。

スープの入った器を
両手で持ち、
ごくごく飲み込んでいる。

パンには
バターを塊で乗せて、
ほとんど一口にかぶりつき
ろくに咀嚼もせず飲み込む。

そして数回にわたり、
カウンターと長机を
行ったり来たりして
食物を取ってきた。

俺は自分が
食べるのも忘れて、
ぽかんとその様子を見ていた。

これが本当に、
人にものを食べているところを
見られたくないと
言っていた者の姿なのか。

ある程度、
腹がくちくなったのか、
ニカイアが
我に返ったように俺を見た。

「どうしたのミゲーレ。
食わないの?」

俺はニカイアを見たまま、
ぎこちなくパンをとり、
ちぎった。

あまりにどか喰いしている
姿を眼にして、なんとなく
食欲が減退していた。

「ニカイア、
どうしたんだ急に。」

ニカイアは不思議そうにした。

「何が?」

「俺が前、
あんなにおまえに
食事をさせようと
苦労したってのに、
急にそんなに大食いして。」

ニカイアはくすりと笑う。

「腹が減ったんだ。」

「人に見られるのが
いやだとか、なんとか・・・」

「ああ。」

ニカイアは、
バターをナイフにとって、
そのままそれを食べた。

それを見て、
また俺はたまげた。

「もう、いいやって、思って。」

俺はしばらく
ニカイアを見ていたが、
気を取り直して、
スープを一口すすった。

「まあ、よかったよ。
たくさん
食べられるようになって。」

ニカイアがふふ、と笑った。