冥王星

声をかけて部屋に入る。

「おまえら、大丈夫か?」

奥のベッドの上段には
又三郎。
下段にはニコル。

そして手前のベッドの
下段は空いていた。

上段には
ニカイアがいた。

「ミゲーレ」

又三郎が意外そうに呼んだ。

「この下は、空いてるのか?」

俺が訊いた。

「そこはロメオが寝ていた。
上段はニカイアのために
少し前から空けておいたんだ。」

ニコルが答えた。
その声は、
本当にニコルの声か?
と疑った。

いつものような
弾むような声のはりが全くなく、
聞き取りづらく、
口の中でつぶやくだけだった。

「ニコル、大丈夫か?」

俺はニコルの寝床を覗いた。
いつもならば、
俺がこのように接近すると
すぐに避けるなり、
小言を言うなりしてくるのだが、
今日は俺をぼんやり見ている。

それが、何か
決定的な打撃を受けた人
そのものという様子だった。

「大丈夫だが。」

ニコルは言った。
とてもそのようには思えない。

「俺、そこで寝るわ。」

ロメオが寝ていたという
ベッドは仲間によって
片付けられていた。

すこし気味が悪い気もしたが、
それより何か不安だったのだ。

俺は自分の部屋から
寝具を持ってきた。

「ミゲーレ、来てくれたの?」

又三郎が言った。

ふいに二段ベッドの
上段からニカイアが
顔をのぞかせた。

肝を冷やす。

「こんな時間に
お引越しかい?」

「おまえ、何?」

こんな風に気さくに
ニカイアに声を
かけられたのは初めてだった。

「ああ、それにしても、
腹が減ったなあ。」

耳を疑った。
たしかに、ニカイアの声だった。