冥王星

ロメオの葬儀が行われた。
いつもの
工事中の大聖堂ではなく
建物の奥の
小さな礼拝堂で
行われていた。

その部屋は一面
白く朽ちかけた石で
できていた。

祭壇には

A Ω

の文字が刻まれていた。


狭い礼拝堂は満員だった。

大泣きしているせむしが
俺を見つけると、
何か言おうとして
言葉にならず、俺を抱いた。

又三郎も泣いていた。
オギ副院長も泣いていた。
オギ副院長はハンカチで
しばしば目頭を押さえていた。

礼拝堂はすすり泣きで
あふれていた。

ニコルが見えた。

ニコルは涙を
流していなかった。

しかし、
ひどく落胆していた。

まだ、
涙を流せるのはましだ。

落胆のあまり、
涙すら流せないで
いるように見える。


俺は信じられなかった。
ゆうべ、猪の肉を
食らっていたロメオが、
むくろになった。

つい、十数時間前だ。

生きて、笑っていた。

それが、
ほんの十数時間の後には
死んでいたんだ。


ふと、違和感を感じた。

ニカイアが礼拝堂の隅に立ち、
この光景を見渡していた。

オーベール師は
祈りの言葉を唱える。

それに続いて
修道士たちも祈りを唱える。

ロメオはすでに
棺に納められていた。

ニカイアは祈りもせず、
客観的に光景を見ていた。

これまでのように、
ぼんやりとこの世界を
眺めているのとはまるで違う。

まるで、
見物に来た巡礼客ででも
あるかのように、
ものめずらしげな、
新鮮な反応をしている。

あのニカイアはなんだろう。

何も見えない感じない
世界に閉じこもっていた者が、
突然、外気に触れた。

突然に目が開かれ、
敏感に外部の刺激に
反応するように
なったようだった。



それから、ロメオの棺は
対岸の墓地に
埋葬されることになった。

ロメオと
とくに近しかった
修道士たち数人に添われ、
船で運ばれていった。