冥王星

俺は
オーベール師とオギ副院長に
説明しようとしたが、
どうも要領を得ず
しどろもどろになる。

それでも異常事態が
起こっていることは伝わり、
二人は俺に応じた。


俺が二人を連れて
古木のもとに戻ってくると、
ひとり、ニカイアがいた。

縊死体を見ると、
オギ副院長は小さな声を上げ、
俺の手を取った。

オーベール師は驚き、
佇んでいた。


ニカイアは俺が
恐ろしさのあまり
近づくことのできなかった
縊死体に平気で近づき、
まじまじと見ていた。

死体を前から見たり、
後ろから見たり、
ぶら下がっている枝を
見上げて、
縛り付けてあるロープを
観察したりしていた。

不気味だった。

今までこの世界に対して
何の興味も抱かなかった
ニカイアが縊死体を
興味津々に見つめているのだ。

そういえば、少し前、
この古木の根元に
ニカイアの
切り落とした髪を埋めたのだ。



しばらくして
オーベール師が言った。

「これは誰かわかるかね?」

目玉が飛び出していては
生きていた頃の面影はない。

「これはロメオです。」

言ったのはニカイアだ。
ニカイアは縊死体の
寝間着のすそをめくって見せた。

そのすねの脇には
刺青があった。

ジュリエッタ。



すぐに他の連中もやってきた。

みな、恐ろしがって
一定の距離を置いて集まった。

「とにかく降ろしてやろう。」

オーベール師が言った。

「ミゲーレ、ロープを
切ってくれないか。」

「わかりました。」

俺は転がっていた
木箱に乗った。
ロメオはおそらく
こいつを使って首を吊り、
蹴飛ばしたのだろう。

木箱に乗ったはいいが、
はさみも何も持っていなかった。
平常心をすっかり失っている。

「だれか、手を貸してくれ、」

オーベール師とオギ副院長は
ロメオの遺体をかかえた。

集団の中から
歩み出たものがあった。

ニコルだ。

ニコルは俺にナイフを渡した。
そしてロメオの足をかかえた。

俺は震える手でナイフを
ロープに当てた。

オーベール師と
オギ副院長とニコルに
抱えられ、
遺体は地面に横たえられた。

「ああ、かわいそうにね。
かわいそうにね。
こんなになってしまって。」

オギ副院長が涙を流した。

ロメオの遺体にはシーツが
被せられた。


一連の光景を興味深く
見つめていたニカイアが
誰にともなく言った。

「今日は、俺の誕生日だ。」