そんな、気力を吸い取られる
ような毎日に、ちょっとした
お楽しみが起こった。
狩人から、
三頭の猪の寄進があったのだ。
その夜は
いつもの食堂ではなく、
迎賓の間と呼ばれる
大きな暖炉のある部屋で
全員で猪をいただくことになった。
そうだ、この部屋は、
道化師としてサーカス団で
興行にここにやってきたときに
もてなしを受けた部屋だった。
又三郎たち厨房係も
昼間から準備していた。
部屋に入ると
暖炉の上で焼かれた
猪の油の焦げる匂いと、
ハーブの香りが
混ざり合って、
ものすごく食欲を
かきたてられた。
腹がぐうぐうなって、
涎が出てくる。
「ミゲーレ、おいで!」
又三郎が俺を呼んだ。
厨房係も全員出てきて、
肉を取り分けたり
給仕をしていたが、
肉を切り分けるそばから
率先してやつらが食っていた。
現場の連中はもちろん、
子供たちも、
初老の学者先生たちも、
事務員も
みな肉に殺到していた。
「ミゲーレ、
ここが一番うまいんだよ。」
そう言って又三郎が、
ちぎった肉を渡した。
それは皮がこげて
油がまだじゅうじゅう
いっている。
肉を噛みしめた。
俺は猪肉を食らうのは
初めてだった。
豚と似ているが、
肉が硬くしっかりしていて
味が濃い。
「うまい。」
猪の生命力が
そのまま俺の体に入ってくる。
「うまいよなあ。」
又三郎は
肉を切り分けるのも
そこそこにぱくついている。
「ミゲーレ、
こいつを食ってみな。」
見ると厨房の親方だった。
親方は皿に、
肉と芋を盛り合わせてくれた。
猪の臓物を取り出した後に
ハーブと芋を入れて
丸焼きしたのだ。
「猪は芋を食って生きてる。
食っていたものとの
相性は抜群なんだよ。」
親方は説明してくれていたが、
俺はろくに聞きもせず、
目の前のご馳走に
夢中になっていた。
そうだ、俺は
野生の生き物を
今まで食ったことがなかった。
豚も羊も鴨も鶏も牛も、
みな食用に飼育されたものだ。
野菜でさえも、
人が畑で作ったものだ。
野生の生き物の肉は
滋味深いのだ。
又三郎が葡萄酒をくれた。
葡萄酒がまた
食欲を増進させる。
のめば飲むほど、
食えば食うほど、
腹が減ってくる。
親方は非常に満足そうに、
この光景を眺めていた。
オーベール師は、
やはり今日もマヨネーズを
かけて食している。
遠くから親方はぼやいた。
「塩と黒胡椒で食うのが
一番うまいのに。」
ような毎日に、ちょっとした
お楽しみが起こった。
狩人から、
三頭の猪の寄進があったのだ。
その夜は
いつもの食堂ではなく、
迎賓の間と呼ばれる
大きな暖炉のある部屋で
全員で猪をいただくことになった。
そうだ、この部屋は、
道化師としてサーカス団で
興行にここにやってきたときに
もてなしを受けた部屋だった。
又三郎たち厨房係も
昼間から準備していた。
部屋に入ると
暖炉の上で焼かれた
猪の油の焦げる匂いと、
ハーブの香りが
混ざり合って、
ものすごく食欲を
かきたてられた。
腹がぐうぐうなって、
涎が出てくる。
「ミゲーレ、おいで!」
又三郎が俺を呼んだ。
厨房係も全員出てきて、
肉を取り分けたり
給仕をしていたが、
肉を切り分けるそばから
率先してやつらが食っていた。
現場の連中はもちろん、
子供たちも、
初老の学者先生たちも、
事務員も
みな肉に殺到していた。
「ミゲーレ、
ここが一番うまいんだよ。」
そう言って又三郎が、
ちぎった肉を渡した。
それは皮がこげて
油がまだじゅうじゅう
いっている。
肉を噛みしめた。
俺は猪肉を食らうのは
初めてだった。
豚と似ているが、
肉が硬くしっかりしていて
味が濃い。
「うまい。」
猪の生命力が
そのまま俺の体に入ってくる。
「うまいよなあ。」
又三郎は
肉を切り分けるのも
そこそこにぱくついている。
「ミゲーレ、
こいつを食ってみな。」
見ると厨房の親方だった。
親方は皿に、
肉と芋を盛り合わせてくれた。
猪の臓物を取り出した後に
ハーブと芋を入れて
丸焼きしたのだ。
「猪は芋を食って生きてる。
食っていたものとの
相性は抜群なんだよ。」
親方は説明してくれていたが、
俺はろくに聞きもせず、
目の前のご馳走に
夢中になっていた。
そうだ、俺は
野生の生き物を
今まで食ったことがなかった。
豚も羊も鴨も鶏も牛も、
みな食用に飼育されたものだ。
野菜でさえも、
人が畑で作ったものだ。
野生の生き物の肉は
滋味深いのだ。
又三郎が葡萄酒をくれた。
葡萄酒がまた
食欲を増進させる。
のめば飲むほど、
食えば食うほど、
腹が減ってくる。
親方は非常に満足そうに、
この光景を眺めていた。
オーベール師は、
やはり今日もマヨネーズを
かけて食している。
遠くから親方はぼやいた。
「塩と黒胡椒で食うのが
一番うまいのに。」

