冥王星

もう翌日から俺は
いちいちニカイアが
食事を摂ったかどうか
見に行くのはやめた。

もう、俺ができるだけの
ことはやったんだ。

あとはニカイア次第だ。


ニカイアの16歳の誕生日は
目前だったが、
即戦力どころか、
資材をひとつ運ぶのにも
おそろしく時間がかかった。

猫車は一緒に
支えてやらないと
まっすぐ進むことすら
できなかった。

いつもニコルが
何か言いたそうな顔で
見ていたが、
俺は平然とそれを無視していた。

ニカイアは相変わらず、
この世界に何の興味も示さず、
指示されたことを
のろくさくやってみるだけだった。


俺は投げ出したくなっていた。

いくらこちらから球を投げても
何も返ってこない。

反抗でも、怒りでも、
何でもいいから返ってくれば、
まだこちらも対応のしようがある。

だが、何もない空間に、
働きかけることは、
おそろしく労力が必要だった。

もういいよ。
おまえは何もしなくて。

何度もそう言いたくなった。


遠くのほうから、
よくニコルの大きな声が
聞こえてきた。

それはたいていは
ロメオに対しての叱責だった。

仕事に関して何も
興味を示さないニカイアが、
その声にだけは
敏感に反応した。

声のするほうに
視線を送るニカイアに言った。

「何を気にしている?」

ニカイアは、いつもどおりに
ヘラヘラ笑って謝っている
ロメオを眺めながら、

「いや?」

と言った。
そしてしばらくしてから
つぶやいた。

「父上と同じくらいの年だな。」

独り言のようだった。