冥王星

その夜、又三郎に言った。

「あのさ、
ニカイアのサンドイッチを、
ひとくち大に切ってもらえない?」

又三郎は座っている俺の体に
寄りかかる体勢になっていた。

もてあそんでいた俺の指先に
つめを立てた。

「痛いっ!」

「なんでニカイアばっかり
特別扱いするんだよ。」

「おまえ嫉妬してんの?」

「してないよ!」

又三郎はぽいと
俺の手を投げ捨てた。

「あいつは食べ物の
見た目の大きさだけで
食う気力が失せて
しまうらしいんだ。

一口で食べられる
大きさにすれば、
パンも肉も野菜も
全部摂れるだろ。」

「わかったよ。やってやるよ。」

俺は又三郎の背を抱いた。

「ありがとな。」

力を込めると
反発するような躍動感がある。

ニカイアの身体も、
こんな風にたくましくなって欲しい、
と願っていた。

さっきは、
他人の生き死にに
口出しするつもりはない、
などと思っていたのに。