俺は現場の脇に
ニカイアを座らせた。
ニカイアの
側頭部中ほどから
後頭部中ほどまでの
頭頂部の髪を束ね、
顔のほうに垂らしておいた。
そして残った頭の
下半分の毛をはさみで
切り落としていった。
地面に落ちる髪の束を
見てニカイアが言った。
「おい、
約束がちがうじゃないか!」
「大丈夫だよ。
ちゃんと上のほうの長さは
残してやるから。」
はさみで切って
短くなった後頭部の毛を
かみそりで剃っていった。
頭の下半分が
すっかりきれいな
丸坊主になると、
今度は束ねておいた
前髪と頭頂部の毛を下ろした。
そして前髪を
組みひものように編みこみ、
そのまま長く伸びた部分
全体を編んでいった。
けっこうな長さがあるため、
時間がかかった。
最後に毛先まで
すっかり編みこむと
革紐でしっかりと縛った。
「どうだ。完了だ。」
一仕事だった。
ニカイアは自分の頭部に
そっと触れてみた。
「なんだこれは!?」
坊主にされた側頭部と、
複雑に編みこまれた髪を
しきりに確かめている。
「そいつはシンの国の
皇帝の髪型なんだぞ。」
「シン?」
道化師のころ一時期
一緒に舞台に立っていた
雑技団がこんな髪形をしていた。
本当は奴らは前髪もそり落とし、
後頭部にちょこんと編んだ髪を
ぶら下げていたが、
それだとあまりに
見た目の印象が
変わりすぎるので、
今回は前髪は残した。
「変てこな髪型にしやがって。」
ニカイアが初めて
俺に対して、他者に対して、
本気で言った言葉だった。
俺はあらためて正面から
ニカイアの顔を見た。
そして噴き出してしまった。
「似合ってる。」
ニカイアは俺を指差した。
「笑ってるじゃないか!」
「それに、ほら。」
俺はぶら下がっている
編まれた髪を取り見せた。
「ちゃんと長さは残ってるだろう。
これならじゃまにもならない。」
ニカイアはその髪を手に取り、
束ねられた毛先を見つめた。
ニカイアを座らせた。
ニカイアの
側頭部中ほどから
後頭部中ほどまでの
頭頂部の髪を束ね、
顔のほうに垂らしておいた。
そして残った頭の
下半分の毛をはさみで
切り落としていった。
地面に落ちる髪の束を
見てニカイアが言った。
「おい、
約束がちがうじゃないか!」
「大丈夫だよ。
ちゃんと上のほうの長さは
残してやるから。」
はさみで切って
短くなった後頭部の毛を
かみそりで剃っていった。
頭の下半分が
すっかりきれいな
丸坊主になると、
今度は束ねておいた
前髪と頭頂部の毛を下ろした。
そして前髪を
組みひものように編みこみ、
そのまま長く伸びた部分
全体を編んでいった。
けっこうな長さがあるため、
時間がかかった。
最後に毛先まで
すっかり編みこむと
革紐でしっかりと縛った。
「どうだ。完了だ。」
一仕事だった。
ニカイアは自分の頭部に
そっと触れてみた。
「なんだこれは!?」
坊主にされた側頭部と、
複雑に編みこまれた髪を
しきりに確かめている。
「そいつはシンの国の
皇帝の髪型なんだぞ。」
「シン?」
道化師のころ一時期
一緒に舞台に立っていた
雑技団がこんな髪形をしていた。
本当は奴らは前髪もそり落とし、
後頭部にちょこんと編んだ髪を
ぶら下げていたが、
それだとあまりに
見た目の印象が
変わりすぎるので、
今回は前髪は残した。
「変てこな髪型にしやがって。」
ニカイアが初めて
俺に対して、他者に対して、
本気で言った言葉だった。
俺はあらためて正面から
ニカイアの顔を見た。
そして噴き出してしまった。
「似合ってる。」
ニカイアは俺を指差した。
「笑ってるじゃないか!」
「それに、ほら。」
俺はぶら下がっている
編まれた髪を取り見せた。
「ちゃんと長さは残ってるだろう。
これならじゃまにもならない。」
ニカイアはその髪を手に取り、
束ねられた毛先を見つめた。

