ゲドウを見送った後、
宿場町の
路地の突き当たりの
裏庭で又三郎と
交接した。

その後二人で、
薄汚い裏庭に
横たわっていた。

「ゲドウとはもう
会うことは
ないんだろうね。

ひどい奴だったけど、
そう思うと、
ちょっとさみしいな。」

又三郎が言った。

「ゲドウとは
もう会うことは
ないかもしれないけど、
ゲドウの絵は
いつかどこかで、
目にすることは
あるかもよ。」

俺は仰向けに横たわり、
頭の下で腕を組んだ。

「そうだね。
そんな時が
あるかもね。」

又三郎は俺の胸に
頭を乗せた。

「だけどおまえは
ゲドウの絵、
好きだった?
きらいだった?」

「僕が見たのは
マタイの召し出しの絵
だけだったけど、
かっこいいと思ったよ。」

「そうか、結局、
ゴリアテの首を持つダビデは
おまえは見てないんだ。」

「そういえばそうだ。」

「あんまり
おまえ好みではないかもな。」

「そう?」

そんなことを
しゃべっていると、
路地から小さな影が
こちらに歩いてくる
のが見えた。

小さな影は
俺たちに気づくと驚いた。

俺は体を起こした。

「マリア?」

「ミゲーレさん?」

小さな娼婦のマリアだった。
手には包みを持っている。

「何してるの
こんなところで?
そんなところで
寝転んでたら
風邪をひいちゃうわよ。」

「だあれ?」

又三郎が俺に尋ねた。

「この子はマリアだよ。」

マリアは裏庭にある
納屋の戸をあけた。

「お二人とも
こちらへお入りに
なったら?」

いつかトラビスが、
マリアは自分だけの
場所を持っていると
言っていた。
それがここだったのだ。