リネットの重い剣は、徐々にローアンの短剣を押していく。
………駄目だ。このまま押し合いが続けば………もうあまり保たない。
短剣の刃に、小さな亀裂が走った。
……姉に斬られる。
私を守ってくれた…………優しい………リネットに……。
彼女には………そんなことをしてほしくない。
争いが何よりも嫌いだった姉に………人殺しなどさせてはいけない……!
………耐え切れなくなり……ガクン、と膝の力が抜けた。
………駄目なのか。
そう、思った時だった。
リネットの背後に、一瞬、別の真っ黒な影が地面から現れた。
それはすぐに、吸い込まれる様に地面へ消えたが………リネットの注意が背後に移り、押して来る剣から、フッと力が抜けた。
…その瞬間を逃さない。
「―――っあああ!!」
ローアンは力を振り絞り、思い切り短剣を振って、リネットの剣を弾いた。
剣はリネットの手元を離れ、弧を描きながら宙を飛び、高い柱の上の方に突き刺さった。
ぼんやりと剣の行方を目で追っていたリネットの脇から転がり込み、ローアンは中庭の角から抜け出した。
柱に刺さっていた剣はドロリと黒い液体へと形状を変え、落ちた後、地中に吸い込まれていった。
リネットの手に、何事も無かったかの様に、再び剣が現れる。
武器など、身体の一部に過ぎない。
弾いたり、壊したりしたところでまた再生されるだけだ。
………切りが無い。
肩で息をしながら、ローアンは再度短剣を構えた。
………リネットは微笑を浮かべる。

