亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~










「…………呪い………………か…。………………………………中々…よく出来た呪いだな……」

長い長い廊下の先。

道を遮る様に仁王立ちしている男を、クライブは笑いながら見詰めていた。


……ズルズルと後を引く粘着質な液体。
いきなり現れ、大柄な男の姿となった影は、ゆっくりと剣を構えた。


片刃の、真直ぐで巨大な剣。


男の目には光が無い。ユラユラと揺れる身体には、所々斬られた様な跡がある。………厚い胸部は、杭でも刺さったかの様な風穴が空いていた。




クライブも同様に剣を抜き、ブラリと横に垂れた。





「…………カルジス…………殺された後は燃やしてもらえなかったのか………?……………………………フフ………死んだ後も醜態を曝すとはな……………」


つい一ヶ月前まで、配下にいた弟子。

………手元を離れ、一匹狼と化し、無惨な死に方をした男。

………ゴーガン=カルジス。










「…………死んでも尚…………その反抗心は治らないのだな………………………カルジス………お前は感情に流されなければ………頭のキレる男だったのだがな………」


ゴーガンは虚ろな目でクライブを凝視したまま、剣の柄を両手で握り締めた。
















「………残念だ。…………………………………………………愚かな、弟子が………」


















口元が緩む。









弟子をこの手で斬ることに、微かな快感を覚えた。


















罪悪感?


そんなものなど無い。


ある筈が無い。






















楽しくて仕方無い。