胴体を半分以上斧で斬ったところで、イヨルゴスは斧を手放し、太い幹に両手を添えて………………自力で、上半身と下半身を離した。
ブチブチ…と皮膚や血管が千切れる。
幹にめり込んだ、痙攣する下半身。
腰から上だけになったイヨルゴスは、そのまま地面に俯せに倒れた。
「…………自力で……パラサイトから抜けた……」
身体を引き離し、逃れた怪物。………どれ程の痛みが伴うのか。想像も出来ない。
………いや、既に痛覚など無いのかもしれない。
「………狂ってる…」
残された下半身の惨たらしい断面からは、反り立った黒い背骨が見え、不気味な青黒い血液が噴水の様に吹き出している。
……上半身だけの怪物は、その巨大な両手を動かし、ゆっくりと地を這う。
………ビクビクと痙攣する身体や、後を引く血液と肉片の塊など、気にも止めずに。
………血走った青い瞳が、兜の下でギョロギョロと忙しなく動き回り……………豆粒程に小さいキーツの姿を捉えた。
縫われている避けた口が、震える。皮が剥れた唇が隙間を作り…………血を吐いた。
イヨルゴスは両手を動かした。
爪を大地に食い込ませ、重い身体を引き摺って………前へ。前へ。
狂気染みた鋭い視線をヒシヒシと感じながら、キーツは剣を構えた。
「………キーツ様………お逃げ下さい。……………あれはもう………生き物の目ではありません……」
「………幽霊と戦っているのか?……………………いや…………………もっとややこしくて………怖いものだな…………」

