一歩進む度に、小さな衣擦れの音が鳴る。
高いヒールの踵が、柔らかな絨毯に深く沈んだ。
………ヒールは今後一切…履くのは止めておこう。……歩き辛い。
足場の悪い凸凹道でもないのに、バランスを取るのに必死だった。
フラフラと、しかし確実に一歩ずつ踏み込みながら、壁に手を掛けて進んだ。
足元では何故かおおはしゃぎのルアが、千切れんばかりに尾を振り、吠えながらクルクルと回っている。
………ドレスに身を包んだ昔の主人の姿。懐かしいのだろうか。
しかしルア。
はっきり言って邪魔だ。踏みそうだ。
ガクン、と身体が前のめりに倒れそうになったが、なんとか体勢を整えた。
どうしてこう……女の着るものは動き辛いんだ…!
内心で悪態を吐くローアン。
壁から手を離し、なんとかして真直ぐ立った。
……ふと顔を上げると、すぐ目の前に大きな古い鏡が立て掛けてあった。
…………青いドレスを着た、見慣れない自分がいる。
………こっちを見ている。
鏡に映った等身大の自分は、しばらくこちらを睨んだ後、微笑を浮かべ、小さな溜め息を漏らした。
(……………私も………一応…女、か…)
改めて気付いたというか、少し忘れていたというか。
ローアンは無言で鏡を見詰めたまま、後ろで団子状に結い上げていた髪を………スルリと、解いた。
軽くウェーブの掛かった、絹の如き滑らかな金髪。
腰にまで届きそうな髪は、絡むことなく重力に従ってフワリと肩と背中に垂れた。
高いヒールの踵が、柔らかな絨毯に深く沈んだ。
………ヒールは今後一切…履くのは止めておこう。……歩き辛い。
足場の悪い凸凹道でもないのに、バランスを取るのに必死だった。
フラフラと、しかし確実に一歩ずつ踏み込みながら、壁に手を掛けて進んだ。
足元では何故かおおはしゃぎのルアが、千切れんばかりに尾を振り、吠えながらクルクルと回っている。
………ドレスに身を包んだ昔の主人の姿。懐かしいのだろうか。
しかしルア。
はっきり言って邪魔だ。踏みそうだ。
ガクン、と身体が前のめりに倒れそうになったが、なんとか体勢を整えた。
どうしてこう……女の着るものは動き辛いんだ…!
内心で悪態を吐くローアン。
壁から手を離し、なんとかして真直ぐ立った。
……ふと顔を上げると、すぐ目の前に大きな古い鏡が立て掛けてあった。
…………青いドレスを着た、見慣れない自分がいる。
………こっちを見ている。
鏡に映った等身大の自分は、しばらくこちらを睨んだ後、微笑を浮かべ、小さな溜め息を漏らした。
(……………私も………一応…女、か…)
改めて気付いたというか、少し忘れていたというか。
ローアンは無言で鏡を見詰めたまま、後ろで団子状に結い上げていた髪を………スルリと、解いた。
軽くウェーブの掛かった、絹の如き滑らかな金髪。
腰にまで届きそうな髪は、絡むことなく重力に従ってフワリと肩と背中に垂れた。

