亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~

「―――前回の襲撃では火を放ち、こちらが先手を打った。……故に、今回の戦…あちらは相当警戒している筈だ。…………罠を張るなら、最初より戦の最中だ。………何か案は無いか?……物覚えの良い魚は…同じ網には二度も掛かってはくれないぞ…」

「………頭が良過ぎて困るね。………魚と言うより、質の悪い水獣か精霊エコーの親玉だ……」

「………何かしら、相手も策を練ってくるでしょうね。………先手を打って来るかもしれない…」


城と沈黙の森のど真ん中に広がる広々とした荒野。

広大な範囲の地形が描かれた巨大な地図を、三人はじっと見下ろしていた。
キーツの手には白と黒の駒が握られている。

「……まず、“闇溶け”の対策を取らねば話にならない。あの能力一つ消すだけでだいぶ楽だからな…」

「一応、まだブレイズツリーの樹液は残ってるぜ。……この広大な荒野を囲む程の量は残ってないがな…」

ブレイズツリーの樹液は極めて貴重だ。まだ残っているだけでも有り難い。

「充分だ。火種はワイオーンに任せるとして………問題はその樹液を何処にどれだけ撒くか…だな」

「………足止めや防御ではなく、あくまで“闇溶け”の能力を弱らせる使い方をした方が無難でしょうね…」


相手の兵士の多さや動き方も気になるが、特に念頭で渦巻く疑問は、三人共一緒だった。



「……………あの男はどう出ると思う?」









難題は、これだ。






今まで一度も出て来なかった、一番強力で厄介な男が今回動き出すのだ。



「………俺が思うに………おっさんは団体行動を嫌う極度の一匹狼だな……」

「自分独りで単独行動……もしくは、隊長クラスの人間だけを動員した少人数での行動…」