亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~

手短に言い、次に移る。

「……次は違う場所だが……ルア、風景を変えてくれ」

足下にいるルアは、再度石を光らせる。

一瞬、ぐにゃりと風景が歪んだ。

気がつくと、今度は森に近い原野に変わっていた。

その風景の中に、大きな槍を構えた男の姿が見えた。

……見た瞬間、リストは顔をしかめる。

「……僕、あいつ嫌いです。……ガキ扱いしてくる野郎だ…」

後で、オーウェンは吹き出しそうになるのを堪えていた。

「……これが、第3部隊隊長…ジスカ=バルパトス………俺はまだ会った事は無いが…まだ若いな…」

キーツはまじまじと男の姿を観察する。

「……結構良い奴だぜ?敵じゃなかったら良い酒飲みダチになってたがなぁ」

「……冗談じゃない…」

リストはふん、と顔を背けた。

「………“記憶”にあったのはこの三人だけだ。総隊長は居いなかった。……ああ、そうだ…一つ、気になる事がある…」

ルアの角の石がフッ、と光を無くしたかと思うと、いつの間にか最初の部屋に戻っていた。