亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~

「……ちらっと見たことはあったけどよ……全身像は初めて見た。…うん、立派な悪人面だな。このおっさん幾つだ?」

じろじろと眺めるオーウェン。ふざけるな、とリストが小突く。

「……第2部隊隊長なだけあって、戦闘能力は高い。攻撃の一つ一つが強力だ。………素手で岩を粉砕出来るらしい」

「……それって人間?」

オーウェンはにやにやと面白そうに呟いた。
…キーツは無視して次の説明に入る。

「……次…あの男だ。……第1部隊隊長、ベルトーク=リンクス………宣戦布告をしてくる使者は毎回あの男だからな……顔も声も知っていると思うが………戦場での姿を初めてとらえる事が出来た」

長い金髪を風に靡かせ、優雅な様子で兵士の首を刎ねている男。

………この男は、戦場での目撃情報が一切無い。
……早すぎるのだ。

目にも止まらぬ俊敏な動きで切っていく。
切られた事にも気がつかない程だ。

奴は返り血など浴びない。

「………こうやって“記憶”にあったのは奇跡だな。………見ての通り、奴の武器は刃渡り二メートルと長い細身の剣だ。……この男と対峙する時は、最低でも五メートルは離れる様に」