亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~


地面に仰向けに横たわるローアンの見上げる先には………こちらをじっと見下ろす無言のキーツ。



………ローアンはふっと、薄い笑みを浮かべた。





「…やはり……力では勝てんな…………さすがだ総団長殿」

…息切れ一つしていないキーツ。
喉に突き付けた剣を退け、ローアンの手を取って身体を起こしてやった。


互いに剣を鞘におさめた後、ローアンは一息吐きながらキーツに視線を移す。

「………」

「…………何だ…?」

綺麗な瞳にじっと見られて、だんだんと気恥ずかしくなる。
………途端、無表情だった彼女の顔が、笑みを浮かべた。

温和な笑みではなかったが、女性特有の、艶やかさを備えた切れのある微笑だった。


……ブルッと身体が震えるのが分かった。


「………どうしようもない奴だと思っていたが………………見直した」

言い終えるや否や、手元の剣をオーウェンに向かって投げた。

オーウェンは弧を描いて飛んで来る剣を片手でキャッチした。


そのままズカズカと貴族の城の方へ戻るローアン。

リストの隣りを過ぎた直後、ローアンは彼の背中をポンと叩いた。

「後で暇があれば、お前にも手合わせ願おうか…」

「………」


始終オロオロしていたアレクセイの元に戻り、ローアンは建物内に姿を消した。















「………………キーツ~…………キーツ君~~?…………………こりゃ駄目だ」

オーウェンは何度も呼び掛け、顔の前で手をヒラヒラと振っていたが………………反応が無い。




キーツは真っ赤になったまま、完全に固まっていた。