地面に仰向けに横たわるローアンの見上げる先には………こちらをじっと見下ろす無言のキーツ。
………ローアンはふっと、薄い笑みを浮かべた。
「…やはり……力では勝てんな…………さすがだ総団長殿」
…息切れ一つしていないキーツ。
喉に突き付けた剣を退け、ローアンの手を取って身体を起こしてやった。
互いに剣を鞘におさめた後、ローアンは一息吐きながらキーツに視線を移す。
「………」
「…………何だ…?」
綺麗な瞳にじっと見られて、だんだんと気恥ずかしくなる。
………途端、無表情だった彼女の顔が、笑みを浮かべた。
温和な笑みではなかったが、女性特有の、艶やかさを備えた切れのある微笑だった。
……ブルッと身体が震えるのが分かった。
「………どうしようもない奴だと思っていたが………………見直した」
言い終えるや否や、手元の剣をオーウェンに向かって投げた。
オーウェンは弧を描いて飛んで来る剣を片手でキャッチした。
そのままズカズカと貴族の城の方へ戻るローアン。
リストの隣りを過ぎた直後、ローアンは彼の背中をポンと叩いた。
「後で暇があれば、お前にも手合わせ願おうか…」
「………」
始終オロオロしていたアレクセイの元に戻り、ローアンは建物内に姿を消した。
「………………キーツ~…………キーツ君~~?…………………こりゃ駄目だ」
オーウェンは何度も呼び掛け、顔の前で手をヒラヒラと振っていたが………………反応が無い。
キーツは真っ赤になったまま、完全に固まっていた。

